捨て猫の話
会社帰りに歩道橋を歩いていたら掌に乗るような小さな子猫が歩いていた。
みゃーみゃーと鳴きながら私の先を歩く人に近寄っていった。その人は立ち止まりもせずに歩いていった。
私が数秒立ち止まると直ぐに子猫は鳴きながら近づいてきて私の右足の甲に乗ってきた。
茶色の縞模様の子猫であった。掌に乗るくらいの小さな子猫であった。
JRの時間もあったので私は先を急いだ。その私を子猫はみゃーみゃーと鳴きながら走って追いかけてきた。
掌に乗るくらいの大きさなので走ってもヨタヨタとしながら歩みは遅い。
私は子猫の事を気にしながら列車に乗った。
その子猫は数日でも人間に接していたのだろうと考えながら。
数年前、柴犬のマックスと散歩している時に捨てられた2匹の子猫を見つけた。
兄弟の小さな猫であった。
近づくと2匹の子猫は牙を剥いてヒューと威嚇音を発した。
次の日も2匹の子猫は同じ草むらの中にいた。そして近づくとヒューと威嚇したが少し力が弱まったように感じた。
3日目か4日目に雨が降り、2匹の子猫は死んでいた。
最後まで人間に敵意を抱いていた。
今日の朝、子猫はどこかに行ったのだろうかと注意して見回したが、子猫の気配はなかった。
会社で子猫のことを話すと私と同様に子猫を気にしている人間がいた。
昨日、カラスが近くで狙っていたという。
掌に乗るような小さな子猫だからカラスが子猫をさらっていくことも可能だろうと思う。
死んだのか、生きているのか、分からない。
ぶさいくな顔をしていたが、一生懸命に私を追いかけてきた姿が忘れられない。
(2009年5月20日 記)